蒸気機関の技術が普及した仮想大正時代。まだ光と闇が混じりあっていたこの時代は、アヤカシにとっての黄昏の時でもあった。
人々の中から消えゆくアヤカシを救うべく、アヤカシを記事にし続けるアヤカシ記者は存在する。
これは、そんな物語とはまた別のお話。
実直な憲兵の青年と、妖艶なアヤカシの少女の、いつか別れに至る物語。
【裏島正雄】(うらしままさお)
アヤカシ記者。一九〇センチ、三〇代後半~四〇代。不思議な出来事を記事にすることを生業としており、それ故にアヤカシ絡みの事件に遭遇することもしばしば。性格は面倒臭がり屋で、よくため息をついている。しかし実は割と面倒見がいい。あおいからの愛称は先生。
【薮内あおい】(やぶうちあおい)
お金に汚い女学生。アヤカシ記者、裏島正雄に弟子入りしている。自分がそれなりにかわいいことを自覚しており、それを利用したあざとい行動を取ることもしばしば。時に天真爛漫、時に男前。芯の強い子で、いい意味で常識人。好きなものは、お金と裏島先生と仲間たち。アヤカシ記者本編の主人公。
【犬村辰敏】(いぬむらたつとし)
帝国陸軍の憲兵さん。二十五歳、一七八センチ。生真面目な性格で裏島とは犬猿の仲。女子供には優しい好青年だが、少々短気で怒りっぽく、特に裏島相手にはよく声を荒げている。仕事柄、探偵の真似事をすることも。あおいからの総評は「お兄さんみたいな人」。幼いころにシュテンに命を助けられると同時に右腕を食われており、現在、右腕には義手をつけている。過去のことからシュテンに対する態度をつかみかねており、シュテンと関わるたびにおびえた挙動をしてしまう。初恋の相手は当時年上に見えていたシュテン。
【シュテン】
蠱惑的な美少女。美しすぎて明らかに人間ではないオーラが滲み出ている。その正体は、大江山の酒呑童子。犬村に対する感情は「昔食い残した童が美味そうになって帰ってきた」。と同時に複雑な感情も芽生えつつあり、それに対して少しだけ困惑している。
【酒口一助】(さかぐちかずすけ)
通称、いちすけ。背筋が寒くなるほどの美青年で、いつも書生服を身に纏っている。無口で外道で大雑把で傍若無人。よく犬村が被害に遭っている。シュテンが男の姿を取った時の姿。
【犬村イチ】(いぬむらいち)
シュテンと犬村辰敏の娘。
母親そっくりなのにお転婆な子供で、幼いころから突拍子もないことをしては、父親を真っ青にさせている。(母親はドヤ顔をしている)
十歳ぐらいで成長が止まった。
それまでは人間として生きることも想定されて育てられていたが、成長が止まったことによって人間でもアヤカシでもない存在として生きることが決定してしまい、あおいの手助けを受けながら狭間の存在として生きる術を身につけていくことになる。